ダイバーシティ(多様性)を活用した人材育成と地域貢献
ジョンソンコントロールズ株式会社
ビルディングシステムズ
人事本部 技術研修グループ 打保 様
東京システム事業部 AEグループ 髙橋 様
アジアIT ディプロイメント・チーム 鷹尾 様
広報室 藤井 様
3年連続で荒川クリーンエイドにご参加いただいているジョンソンコントロールズ様。
グローバルで取り組む先進的なボランティアプログラム「Blue Sky Involve(以下、BSI)」を実施されています。
今年はダイバーシティ(多様性)の要素も組み入れた新しい活動にもトライしていただきました。活動の企画・運営に関わった皆様にお話を伺いました。
Ⅰ.貴社のお仕事
1. ジョンソンコントロールズ ビルディングシステムさんはどのような業種ですか?
鷹尾様/ジョンソンコントロールズ ビルディングシステムズは、空調制御用機器、冷凍機器、ビル管理システム、保守管理、エネルギーソリューション、統合ファシリティマネジメント事業を提供する世界的なプロバイダーです。 世界150ヵ国以上に500ヵ所の拠点を持つ当事業部は、100万社以上のお客様にエネルギー効率の向上とコストの削減を可能にする製品、サービス、ソリューションを提供しています。
打保様/日本では空調などの自動制御システムとその保守管理サービスがメインになっています。最近では冷凍機の販売、設備機器のメンテナンス、またそれらをマネジメントするサービスも行っています。
2. 皆様のお仕事・所管業務について教えてください。
打保様/現在は技術教育全般を担当する部署のマネジャーです。以前、営業管理のマネジャーとして全国の事業所とコミュニケーションを取る立場だったことから、BSIの担当に選ばれました。
髙橋様/アプリケーションエンジニア(AE)として空調制御システムのソフトウェア作成を担当しています。
鷹尾様/IT関連全般のプロジェクト管理を担当しています。
藤井様/主に社外広報担当として会社の認知度向上のために社外へのニュース配信やブランディングを行っています。広報として社内ネットワーク構築も重要なため、BSI事務局の仕事もするようになりました。BSIの社外広報としては、1年前に数社コラボレーションで実施したビーチクリーニングの告知に絡めてBSI活動について情報配信をしました。
Ⅱ.Blue Sky Involve(BSI)について
1. BSIの概要について教えてください。
鷹尾様/BSIは全3事業部門共同の従業員主導型のグローバル・ボランティアプログラムで、現在50ヵ国を超える国々で実施されています。環境への奉仕、従業員のリーダーシップ開発を促進し、地域の非営利団体や学校を支援しています。寄付だけではなく、実際にボランティア活動に参加することが求められます。
藤井様/支援させていただいている団体の数が毎年増えています。今年はグローバルで1,350団体を支援させていただいています。
2. BSIを通して育成したい人材像は?
打保様/従業員のボランティア活動と地域団体や学校への貢献を通じて、リーダーシップと環境に対する意識を備えた人材の育成を目指しています。
藤井様/地域社会への貢献も大事ですね。
3. 従前の荒川クリーンエイドへの参加について
① 1年目の成果はいかがですか?
打保様/1年目は自宅が活動場所に近い人に参加を呼び掛けたので、多くの方に参加していただきました。予想以上に多くのゴミを拾うことができ、セイタカアワダチソウの刈り取りを行ったので、それがどれだけ効果をもたらすかが翌年の楽しみとなりました。
② 2年目以降の成果についてはどうですか?
髙橋様/毎回、前年からの参加者のリピート率が50%を超え、過去に一度でも参加したことのある人のリピート率は67%と素晴らしい成果を出しています。
参加者のゴミへの意識が変わり、拾うことの重要性だけでなく、マイボトルなどリユースできる素材を使用するなどして、そもそもゴミを出さないようにすることの重要性を認識しました。
また、人間の活動によって日本の自然環境に外来種が増えてきていること、そして在来種保護の難しさを知ったという一も多かったです。中でも昨年実施したセイタカアワダチソウの除草が大きな効果を上げ、在来種が戻ってきていることを確認できたことは喜ばしいことです。
Ⅲ.2012年PFCと共同企画したプログラム案
1. ブラッシュアップされたと思われた点、もしくは、これは次年度も使えるなと思われた点は?
髙橋様/冒頭でのPFCさんのクイズにより、参加者全員が問題意識を持って活動に取り組むことができました。
2. 本研修を通じて、社員の皆様にインプットできた効果は?
鷹尾様/チェックイン、チェックアウトといって、自己紹介や感想をシェアしたことが、初めて参加された家族の方とのコミュニケーションにとても役立ちました。また全体として1つのプログラムとしての流れがあり、チームビルディングが図れました。
Ⅳ.ダイバーシティ
1. 貴社が考えるダイバーシティについて教えてください。
藤井様/弊社ではグローバルでダイバーシティに力を入れています。人種や性別などに関わらず全ての人が活躍できることを重視しています。日本では、ウィメンズ・リソース・ネットワークという女性活用プロジェクトを行っています。これは今後少子高齢化時代を迎えて、労働力としての女性がますます必要になっていることが背景にあります。ワークライフバランスを考えた職場環境を整えることは、男性にとってもメリットがあります。女性が少ない業種なので社内でのロールモデルが見えにくく、その点で進んでいるアメリカ本社の女性幹部に講演してもらうなど経験をシェアしています。
BSIについては、セクションの垣根を越えて社員それぞれがリーダーシップを発揮することで、組織力の向上やチームビルディングに貢献しています。
打保様/異なる部署のBSIリーダー2人でプロジェクト・チームを組ませることで参加者を増やし、プロジェクトの規模が広がります。
2. 荒川クリーンエイド・フォーラムへの活動に参加することで得られるダイバーシティの魅力についてはいかがでしょうか?
鷹尾様/今年は異なる部署のBSIリーダー2人と彼らに協力する仲間でプロジェクト・チームを編成しました。これにより年齢や職種に関係なく、社員それぞれの個性を最大限に引き出すことができました。今までの活動内容に縛られることなく、ワークショップへの取り組みやゴミゼロバーベキューの実現に向けた新しいアイデアを生み出すことができました。
このようにプロジェクトを運用する側に回ると、自主性、リーダーシップ、コミュニケーション能力、そして遊び心の必要性に気付き、普段の業務では見られない個人の多様性が発揮されます。
これが荒川クリーンエイドに参加することで得られるダイバーシティの魅力だと思います。
Ⅴ.BSIリーダー(各NPOの窓口となる社員として)
1. 改めてどのような役割を期待されていますか?
打保様/普段関わりのない団体との交渉、活動の企画、参加者を集める作業に要求されるリーダーシップです。これらは、次世代リーダーの養成に役立っています。
2. 2名制としているポイント・意図についてはどうですか?
髙橋様/メイン・サブと役割を分け、次年度はメインリーダー経験者がサブとして新メインリーダーを助けるという体制をとることにより、年次の引き継ぎを容易にしています。
鷹尾様/今回は初めてBSIリーダーとなり不安もありましたが、昨年度経験者の髙橋がサポートしてくれたおかげで安心して活動に取り組むことができました。
3. 打保リーダーから見たBSIリーダー像、今年度の達成度合は?
打保様/NPO法人など業界外の方々とコミュニケーションを取り、一からボランティアプログラムを構築し、社内でプロモートする、このようにひとつのプロジェクトをリーダーとして完遂することで、リーダーとしての資質が見出されます。リーダー同士も普段仕事で関わりのない人とペアを組むため、お互いにコミュニケーションを取るところからスタートします。ボランティアという通常業務以外の活動は全て初めて経験することで、基本的にリーダー2人で協力して一から行う必要があります。弊社の業務には技術力に加えて、現場をまとめるプロジェクトマネジメント能力が必要です。私は会社の技術教育を担う部署に所属していますが、社内研修ではこのようなマネジメント能力を教えるのは非常に難しいことです。BSIリーダーを行うことでプロジェクトマネジメント能力も養え、ひいては会社の次期リーダーとして活躍していただけるのではないかと期待しています。
昨年は東日本大震災の社内募金と街頭募金活動、タイ洪水被害の社内募金活動がありました。今年度はこのような大きな天災による募金活動がなかったことを非常にうれしく思います。残念なのは雨で中止になった活動が2件あったことです。来年度は本社のある笹塚周辺で平日に行う清掃活動の実施について地域の団体と話を進めています。これまでは休日に遠方へ出かけて行うボランティアが多かったため、今後は誰でも気軽に参加できる活動を推進していきます。
今年度は20のプロジェクトを実施し、300名程度の参加者となる見込みです。計画したプロジェクトの9割程度を実施することができ、非常に素晴らしい結果となっています。
4. 改めて鷹尾さん・高橋さんからいかがでしょうか?
髙橋様/今回はサブリーダーという立場で、昨年の経験を活かして、メインリーダーの鷹尾をサポートする立場で活動しました。
荒川クリーンエイドの活動後のバーベキューでは、マイカップ、マイ皿、マイ箸を持参してきてもらうなど徹底した「ゴミゼロBBQ」を行いました。昨年までに学んだ経験を活かし、このゴミゼロBBQを成功することができて非常にうれしく思いました。
今回は昨年に比べてゴミは少なかったのですが、掘っていくと深くまでゴミが埋まっている状況がわかり、ゴミ拾い後の振り返りの時に6mほど堆積しているとの説明を受けて素直に納得できました。
鷹尾様/私自身、川をきれいにしたいという気持ちが昔からあったので過去2回に亘り荒川クリーンエイドに参加してきました。3回目の今年は初めてBSIリーダーとして活動の企画・実行に関わりました。一参加者であった昨年までとは異なり、今年はボランティア活動の運営を経験したことで大いに学ぶことができました。
運営する側に回ると、引き継ぎや活動の計画、荒川クリーンエイド様との調整、そして社内メンバー募集、実施とその役割は目まぐるしいものでした。しかしその中で、自主性、リーダーシップ、コミュニケーション能力、そして遊び心の必要性に気付きました。ボランティア自体、仕事と異なりますので、まず何も枠がないところから始めること、つまり「ボランティア」という言葉の本来持っている「自主性」「自発性」の意味について考えさせられました。また、人を集めることの難しさ、工夫することの大切さと面白さを学びました。そして、何よりも考え方の柔軟性が広がったことと思います。
このような活動は一見すると日常の仕事に関係ないと思われがちですが、それはとても近視眼的な発想です。実際に活動すると、先ほど申し上げたようにそれがリーダーシップの育成・視野の拡大に貢献すると思います。また、弊社は業務に影響を与えない範囲であれば業務時間内に活動することが承認されています。私自身この点をとても気に入っています。
Ⅵ.広報・世界への発信
1. 当活動の広報活動全般について教えてください。
① 既存活動全般についてはいかがですか?
藤井様/昨年ビーチクリーニングを実施した際にプレスリリースを配信し、数社とのコラボレーションでのボランティア企画というニュース性から、数々のメディアに取り上げていただきました。より多くのメディアに関心を抱いていただけるよう、さらに新しい切り口を探しています。たとえば、荒川クリーンエイドさんとの共同プレスリリースなども考えたいと思います。他社にも参考にしていただけるような新しい企画を実施して、発信していきたいです。また、社内向けには各リーダーが活動レポートを配信し、グローバルのイントラネットに掲載されるものもあります。
② 活動レポートに対する社員の反応はいかがでしたか?
髙橋様/楽しんで読んでもらえました。ゴミ集計データについてはぜひ皆に知ってもらいたくて入れました。具体的に数字が見えるというのは読み手に状況を知ってもらう上で良かったと思います。
2. 対外的(荒川クリーンエイドに参加される企業、これから参加されようとする企業)などに過去3回の成果を踏まえ、メッセージがありましたらお願いします。
髙橋様/簡単にボランティアといっても、先頭に立って進めていく場合は、準備などにそれなりの時間と労力を費やす必要があります。弊社はボランティアに参加することを奨励しているので、業務に支障がなければ、就業時間内でも準備作業をすることができます。この点はとても重要で、これから荒川クリーンエイドなどボランティア活動に参加される企業の皆様にも社員教育の1つと捉えて奨励する体制を整えていただけるといいですね。弊社のBSI活動はリーダーの人材育成に非常に有効だと思います。
打保様/一般的に企業の社会貢献活動は総務・人事部門が行いますが、弊社はグローバルでマネジメント層が率先して推進しているため、従業員自ら積極的に行うことができます。
髙橋様/ゴミゼロBBQはリーダーから出たアイデアです。今回のゴミゼロBBQのようにゴミやエコについて考え、楽しめる要素も入れたことで家族も含めたコミュニケーションの場を創造することができました。
会社から押し付けられた活動ではなく、自分たちで考えながら活動することで、このように色々なアイデアが生まれます。リーダーを決めて任せることによって人材育成につながると思います。
お忙しいところ長時間ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
左から)打保様、鷹尾様、髙橋様、藤井様