荒川でも多く拾われるプラスチックゴミを減らすためにはどうすればよいか。
流れ出てしまったものを拾うだけでなく、その発生源対策をしない限り問題解決に向かいません。
私たちのような市民団体だけではなく、企業や行政、そして一人ひとりが同じ方向を向いて動くことが必要です。
今回のセミナーでは、「プラスチックゴミ対策の最前線 実はこんなにやっています! ~発生抑制や有効利用について~」というタイトルで、プラスチック製造業界およびリサイクル推進業界から2団体をゲストに迎え、各団体が取り組むプラスチックゴミの対策や事例を紹介してもらい、「企業・業界団体とNPO/NGOとの連携の可能性を探る」をテーマにディスカッションを行いました。
はじめに各団体からの発表。
荒川クリーンエイド・フォーラムからは、2015年のゴミ調査結果(散乱ゴミの上位15のランキングや、用途別に落ちているゴミの割合)や最近のゴミの状況や、ゴミの影響について紹介しました。
続いて、日本プラスチック工業連盟(以下 プラ工連) 専務理事 岸村小太郎氏から、ゴミ問題に対する取組みや関係団体での取組について紹介がありました。プラ工連は原料樹脂関係や加工関係などの団体・企業が会員となっている、プラスチック産業の代表組織です。
主なゴミ問題への取組としては、
・「樹脂ペレット漏出防止マニュアル」の作成と関連企業への配布(’92年~’94年)
・樹脂ペレット漏出防止対策の実施状況調査(これまで6回)
・「リーフレット『樹脂ペレット漏出防止』徹底のお願い」の作成と関係業界への配布(2013年~14年)、および漏出防止対策実施状況調査(2015年)
・国際会議の場で取組みの報告(当団体の活動の紹介も)
などです。
また、全国の満20歳以上男女4,000人に行った「プラスチックイメージ調査」を2016年に実施しており(有効回答数1,201人、全体の3割)、そのアンケート項目の一つに「プラ製品は町でポイ捨てしても海洋ゴミになると思うか」という質問に対しては、約半分の人が「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と回答。
しかし、「どちらともいえない」「そう思わない」「わからない」と回答をした人も半数いることから、まだまだ川ゴミ・海ゴミ問題の理解が進んでいないことが明らかになったことも報告。
他団体の取組みとして、発泡スチロール協会(JEPSA)の取組みについて紹介。会員企業が工場に使用済みの発泡スチロールの処理機(減容機)を設置し、リサイクルを実施していることなどを紹介しました。
プラ工連としては、今後もペレット漏出防止キャンペーンの見直しと継続実施、会員各社トップによる「ペレット漏出防止、海洋ゴミ対策への取組み」(仮称)宣誓書への署名推進などを行っていく計画を発表しました。
一般社団法人 プラスチック循環利用協会(以下、循環協)総務広報部 冨田斉氏が、団体の事業内容やプラスチックのリサイクル状況について紹介されました。
循環協での主な取組みは、
①廃プラスチックの発生・循環的な利用及び処分状況の調査研究、環境負荷の評価手法等適正な利用を促進するための調査研究
②プラスチック及び廃プラスチックの循環的な利用に関する教育・学習支援並びに広報
③プラスチック及び廃プラスチックに関する内外関連機関との交流・協力
の3つです。
とくにリサイクル環境教育・学習支援では、2015年では理科教師向け等の研修や小・中・高・大、自治体や団体への出前授業を43件行ったことが報告されました。
その他に、プラスチックの生産に向けられた原油が約3%(2014年実績)であること、樹脂生産量(再生樹脂投入量含む)に対して、83%がリサイクルで有効利用されていること、プラスチックのリサイクル手法と成果物についての紹介が行われました。
他の団体による事例紹介では、和歌山市でプラゴミが分別回収から一般回収に変更となること(分別方法がわかりにくく徹底されていないこと等から)などの紹介がありました。
セミナーの後半では、「業界団体との連携を探る」をテーマに、当団体からプラ工連、循環協に質問を行っていく形式で、ディスカッションを行いました。
【主な質問内容】
Q.1 プラスチックゴミが流出し、荒川のようにゴミとして溜まってしまっているという川ゴミや海ごみ問題について、関連企業などはどのように認識をしているか。
(岸村氏)ペレット漏出防止などを呼び掛け始めたころよりは、各事業団体で漏出防止の管理や発生源対策など進んできているように思う。会長も連盟誌の巻頭挨拶にて「漏出防止の徹底を図るとともに、他団体、NPO等と協力し「海洋ゴミ」を減らす努力を続けます。」といった、海ごみの対策について言及している。責任者・担当者レベルでは認識が広がっているが、会員全員までとなるとまだ難しい。
(冨田氏)学校の出前授業では、前もって学校の周囲でゴミが落ちている様子を写真に撮り、講義に使用している。ゴミを気にする子が多い。
Q.2 荒川では細かいプラスチックゴミが多く見つかる。拾っている方としては、さらに細かくなり再度流出し、海へ流れていくことを懸念しているが、万が一自然界に出ても、環境負荷の影響が少ない素材の推進などはできないか。
(岸村氏)素材でいえば、生分解性プラスチックやバイオプラスチックといった研究が進められているが、コストや性能などがまだ課題。
(冨田氏)今のプラスチックの素材に生分解性プラやバイオプラが混ざることになる。また、現有のプラスチックに比べてコストや性能面で不十分のため普及するには時間が掛かっていると思う。
(ここで、当日参加していた、東レ株式会社(荒川クリーンエイドにも毎年参加実績あり)に自社の製品で、環境に考慮した製品はあるか、という質問を行いました。)
(東レ)自社製品としては、小中学校で使うリコーダーに生分解性プラスチックが利用され、全国に普及されている。
最後に具体的な連携の方法を探るために、当団体から、プラ工連、循環協を通じて会員の団体・企業に、連携の可能性を探る意図で、アンケートを実施できないか?と提案を行いました。
その結果、2団体からは「ぜひやりましょう!」という前向きな返事を得ることができました。
まだ「内容をどういったものにするか?」「実施時期はいつか?」など、進めるにあたっての課題はありますが、問題解決に向けた一歩を今回のセミナーを通じて踏み出せたと思います。
(ふじも)