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【対談】新入社員研修実施企業:株式会社ガリバーインターナショナル様

2007年よりスタートした体験型新入社員研修は、今では多くの会社さんにご活用されるまでになりました。
そのような中、2011年4月24日に実施いただいたガリバーインタナショナル HRチーム 荒木博邦さんにお話を伺いました。
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Ⅰ.はじめに
1.HR(ヒューマンリソース:人事)チームでは現在どのようなお仕事をされていますか?

メインの業務は社員研修です。
なかでも新入社員研修が中心となっています。新入社員研修といっても新卒者だけでなく、毎月中途の新入社員が入社するので、それに応じた2週間の研修を実施しています。月の半分は研修を行っています。

2.本環境CSR研修を取り入れる目的、特にNPOとのコラボレーションや地域社会貢献活動の実態を踏まえる点について、HRチームさんのお考えをお聞かせください。

①3つの視点で教育
ⅰ人として、ⅱ社会人として、ⅲガリバーとして活躍する視点を25日間の研修期間に組み入れるようにしていました。4月24日(日)に実施した荒川クリーンエイド・フォーラムさんとの研修は、人づくりとしての要素を持つと考えています。

②Growing togetherという企業理念
それは、「豊かな未来のために、ガリバーイズムの体現を通して、5つのステークホルダーと共に成長しつづけることを目指します」。
5つのステークホルダーとは、社会・お客様・社員・パートナー・株主を指しますが、そのなかで社会については、「信頼ある企業市民として、地域社会および国際社会との調和的発展を目指します」という文言が掲げられており、それを体現してもらうという位置づけとしました。

Ⅱ.プログラム 事前段階
1.当会を共同相手に選ばれた理由について教えてください。どのようなところに魅力を感じましたか?
①地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)からの紹介
これまでお付き合いのあったGEOCの須藤美智子さんからのご紹介であったため非常に期待していました。

②NPOらしさよりも研修を専門に実施している会社みたいでした
実際に荒川クリーンエイド・フォーラムさんを訪れてお話させていただいた際に、自分の中では即決定させていただいた次第です。こんなこと言って良いかわからないですが、NPOというよりも、研修を専門にやっている会社さんのように感じました。上手くこちらの要望をカスタマイズしていただけると思いました。

2.事前段階で不安に思われた点や期待された点についてご教示ください。

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ACFさんに適切に準備してもらっていましたので、不安に思っていた点は全くありませんでした。
期待としては、当日の活動で、彼らがごみ拾いをやらされているのではなく、進んで行うべきというモチベーションを引き出したいということでした。

3.東日本大震災後という点で不安はなかったでしょうか?

中止という不安は、はっきり言って全くなかったです。3月11日の発災後は、逆にこのような状況「だからこそ」、周囲が不安に思っている状況だからこそ、何も懸念がなかったかのように進めさせたかったです。
この想いは、私たちHRチームに加え、経営トップも同じ想いを持っていました。
強いて言うと、前の別プログラムで震災影響による変更などがあって、活動日程の調整だけが懸案でした。

4.荒川の下見で見た光景はいかがでしたか?

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想像を絶する光景でした!
なぜ、あんなに大量のごみが存在しているのかと・・・。
正直なところ、最初は100名規模で数時間ごみを拾ったら、すぐに終わってしまうのではと心配していましたが、その心配の必要は全く無くないことがわかりました。
昨年の秋には完全に綺麗にした場所と聞いて本当に驚きました。

5.チームの皆様との共有はどのように行いましたか?またそこで出た課題などは?

運営の仕方については、チームリーダーから私に任されていました。下見の際のゴミ状況写真などをすぐに部長に見てもらい共有しました。

新入社員に限らず既存社員もこんなにごみがあるんだったら、人として積極的に片づけたいという想いがありました。まだこの時点ではごみ問題に対する動機づけはあまりしていませんでした。

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Ⅲ.プログラム当日
1.+αの試みとの説明がありましたが、そのαの部分に込められた想いとは?

①ボランティア活動が付加価値を見出すべき+αの部分
日本橋の研修所から、遠く離れた足立区の荒川河川敷まで歩くことがミッションです。ボランティアをすることは伝えていませんでした。
社員を長時間、歩かせるという試みは、ここ数年間の恒例行事としていました。
営業現場にいってから、何のためにこの仕事をしているのか、思い思いに葛藤することは多々あると思います。そのような時に、ネガティブな疑問を持つのでなく、その仕事をすることによって、どのような価値と目的を自分なりに見出すかが重要と思います。その想いで実施しました。

②歩くだけでなく、100人で得られる達成感
歩かせるだけだと「楽しかった」で終わってしまいます。
歩くだけでなく、人として、ガリバーとして、何かをやって、何らかの達成感を得て欲しかったのです。10人のチームビルディングだけでなく100人全体の達成感をあの場で共有したかったという想いがありました。

2.当日新入社員の方々に檄を飛ばされた場面もありました。その際の荒木さんの想いやHRチームとしての方針との関係について教えてください。

散乱ゴミ清掃中.JPG社会人としては約束(時間)を守るのは基本です。
知らないことを教えてないことができないのは叱りませんが、教えていることができないのは叱るということにしています。

時間は誰でもが共通して持っています。自分と他人が共有しているものです。
1分の遅刻は他人の1分も無駄にしていることになります。自分自身の行動が全員に繋がるということを事前から伝えていました。そのうえでの行動であたったため厳しく叱りました。

3.一度休憩をとりましたが、その後の彼らのモチベーションは、かなり向上したように感じられました。プログラムの最後に実施したワークショップの印象はいかがですか?

粗大ゴミ運搬中.JPG
ごみを拾うだけであると、事が起こってから行動するという対処療法的なものでしかありません。
対処療法でなく問題の根本を解決するという視点で考えなくてはなりません。当日のワークショップでは社会全般におけるごみ問題の根本的な解決策について社員個人ができることを考えるきっかけが持てました。活動だけでなくワークショップの両方があって良い相乗効果を生みだしたと思います。
また、何のためにごみ拾いをするかといった荒川クリーンエイドの目的を開会式ではなく、ワークショップ後の講評にてはじめて伝えていただいたシナリオは非常に良かったと思います。しっかり社員に落ちたことを実感しました。

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4.本研修を通じて、社員の皆様にどのような効果(影響・成果)があったと感じられますか?

ボランティアに関する情報は常に発信しています。
ボランティア活動を勧めていますが、すぐに、「よし!やろう」というわけにはいきません。
今回荒川クリーンエイドを経験した新入社員が今後会社で推奨するボランティアに率先して参加するでしょう。今回の活動が全社的にボランティア活動を普及させる起爆剤になることを期待しています。

 

Ⅳ.プログラム の事後・フォローアップなどについて

1.社員の皆様は全国でご活躍と存じます。私たちとの協働を通して得たことを、社員の皆様にどのように実社会に生かしてほしいと思いますか。

新入社員には、日頃の業務において、お客さまが何を思うのかを察知する能力を磨いてほしいと思っています。
環境との関連で1つ例を出します。
室内の研修中にわざとA3の用紙をごみとして放置していたら、社員の誰かが拾っていました。
気づく人、気づかない人がいることに照らし合わせると、気づいた人の中でも拾う人、拾わない人がいるように思います。
このような感性を働かせ、お客様の要望・心のニーズをキャッチする能力を育成してもらいたいと思っています。人としての研修、そして、環境問題に関連した研修を通して、お客様のニーズをキャッチして行動できる人材育成につながれば幸いです。
店舗や店舗の周りで放置されているごみがあれば、それに気づいて拾う人になっていてほしいと考えています。

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2.今回の研修を貴社のこれまでの社会貢献活動のブラッシュアップやCSRマーケティング関連に活かすことができるとしたら、どのような展開を期待されますか?

本活動を本業と絡めたレベルにまで持っていくことは正直求めていません。あくまで人として当然のすべき内容ですので、ボランティア活動については、Non PRポリシーを掲げます。
ボランティア活動について、会社は人材育成のスタンスが強いです。対外的に広げるものでないとトップの考えもあります。
当社のボランティア活動は、理念推進部(CSR関連部門)とHRチームとのコラボレーションにより推進しています。
通年でボランティアを行い、各人の実施率100%を目指したいです。
休日に活動してください、と言っていると強制力がなく苦戦しています。何か良い知恵がありましたら教えてください。

3.ボランティア活動を継続するには付加価値必要です。

①親子世帯への付加価値
お子さんをお持ちの方には、自然観察などが夏休みの宿題でよく出される自由研究などに役立ちます。山や海、川で実施する清掃活動に環境学習が加わるとひとつの付加価値が付くと思います。私たちの荒川クリーンエイドの活動においても自然観察会をオプションで実施する会場があります。
②ボランティアに人事評価を
純粋に社員の方にボランティアを推進する視点においては、ボランティア活動の参加回数と人事評価の加点を組み合わせれば、それなりに大きなインセンティブが働くと思います。
③広範な活動をデータベース化
NPOが実施するボランティア活動のデータベースを作っている会社もあり、それをイントラネットで閲覧できるようにして、社員の好きなジャンルのボランティア活動の情報提供に役立てている会社もあります。

【ACFより】最後に、私たちは、4月24日に貴社と実施した本研修活動を、荒川クリーンエイド・フォーラムのベストプラクティクスだと思っています。多くの企業、そして社会に良い情報発信ができるようひとりでも多くの方々に本インタビューを届けたいと思っています。

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左:株式会社ガリバーインターナショナル
HRチーム荒木博邦様
右:荒川クリーンエイド・フォーラム
事務局長(当時)