【記事】深海ごみと海洋生分解性プラスチックの話~JAMSTECでの経験を添えて~活動レポート

【記事】深海ごみと海洋生分解性プラスチックの話~JAMSTECでの経験を添えて~

皆さんこんにちは、さかおです。

先日立教大の学生さん達に、自分の体験談について話をする機会がありましたので、記事にまとめてみました。

📝立教大RSL活動レポについては、こちら

よろしければご覧ください~

今回の案内人

さかお(新人)

経歴

  • 大学で2年間哲学を専攻し、中退後自然環境系のバイトを転々とする

  (ペットショップ、USJの湖の掃除、マリーナ、環境アセスメント、環境DNA実験、水質検査…etc)

  • JAMSTEC(海洋研究開発機構)にて、「海洋生分解性プラスチックの研究開発プロジェクト」に「臨時研究補助員」として 微生物実験に従事
  • (公財)廃棄物・3R研究財団にて、省庁や自治体と共に資源循環に関するセミナーの運営も行っていた   

 

 

 

 

📝JAMSTECについて

皆さん、JAMSTEC(海洋研究開発機構)ってご存じですか?

 

 

 

 

はい、知らないですよね…(´;ω;`)

 

 

 

正式名称は、国立研究開発法人 海洋研究開発機構 (Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)といって、

・ 深海をはじめとする海洋環境や地球環境の把握、海洋資源の利用、 地震・火山活動に関する調査研究

・ 探査機・観測機器の運用や技術開発

を行っている機関です。要するにJAXAの海版です。

参考:JAMSTEC HP 「ひと目でわかるJAMSTEC

 

JAMSTECは、現在 6隻の研究船、4台の無人探査機、有人探査船「しんかい6500を使って調査研究を行っています。

この有人探査船は、人が実際に深海に行けるもので、実は世界でも数か国しか所持していない大変貴重なものなんですよ~

(2023年に「潜水艇タイタン沈没事故」が世界的なニュースになりましたが、しんかい6500は35年間大きな事故はなく、1800回以上潜航しています)

 

 

📝海洋生分解性プラスチックを開発する

そんなJAMSTECは海洋プラスチック問題に、様々な点で関わりを持っています。

参考:JAMSTECが挑む海洋プラスチック問題

 

ここで唐突にクイズです!

海に流れ出たごみの何%が、深海に沈んでいくでしょうか?

①50% ②70%  ③90%以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は、③90%以上(99%)なんです!

ダストフェンスを設置したり、漁師さんがごみを回収してくださったり、オランダのThe Ocean Cleanupでは、太平洋ごみベルトのごみの回収など大規模に活動されていますが、その量はごく一部…深海はごみの墓場になっているんですね。

参考:海に流されたプラスチックは、99%が行方不明。

 

そういった状況を少しでも防止する為、JAMSTECでは各研究機関とタッグを組んで、海洋生分解性プラスチックの研究開発を行っています。これは、釣り糸や漁具など、自然環境にどうしても流れ出てしまうものが、海中ですばやく分解するように(+製品によって分解のスピードをコントロールできるよう)新たに製品を開発しましょうというプロジェクトです。

参考:NEDOムーンショット型研究開発事業HP

           ムーンショット型研究開発事業 目標4 成果報告会2023 

 

JAMSTECでは、主に大学の先生方が開発した海洋生分解性プラスチックなどを 浅海 /「しんかい6500」で深海に設置し、数か月~1年後に回収して分解度を測り、どういった微生物がいるかということを分析することを担当にしていました。

研究者と相部屋で何日間も船で暮らし、深海にいく研究者を見送り、回収した深海の貝やナマコを船上で目にしたり…

たくさんの想い出ができました! (詳しいエピソードはまたどこかで)

 

船上では、深海ごみや様々なプラスチックサンプルを処理して、研究所に戻ってから微生物実験を行っていきます。

毎日毎日、プラスチック上に付着する微生物のDNA・RNAを抽出してデータ解析する日々…「今日私誰かと会話したっけ?」というくらい孤独で地味な作業が1年のほとんどでしたが、扱うサンプルはどれも貴重なものばかり。データが積みあがっていつか研究成果に繋がるんだと思うと嬉しかったです。

また、美しい海の景色や、変な研究者たち(褒めてる)に囲まれて過ごす日々は、穏やかでとても心地いいものでした。

 

そんな研究成果の一部をご紹介します!

生分解性プラスチックは深海でも分解されることを実証(東京大学プレスリリース)

海洋環境で生分解性プラスチックを速やかに分解させるための技術開発に成功(群馬大学プレスリリース)

透明な紙コップ!?海にやさしい透明な板紙を開発(JAMSTECプレスリリース)

次世代型ポリ乳酸「LAHB」が”深海”で分解開発することを確認(信州大学プレスリリース)

 

実は国立科学博物館でも、私たちが回収した深海ごみなどを展示していたんですよ~

特別展「海」 会場ツアー&監修者トークセッション動画(youtube)

 

 

📝課題が多い海洋ごみ問題

そんな研究開発プロジェクトに関わっている中で、さかおはこんなことを思っていました。

実際に手に取ると、水もはじくんじゃないかというくらいツルツルな深海ごみがあったり…

どんどん降ってくる有機物で海底に埋もれていくごみたち…海底に住む生き物たちに悪影響が出てしまわないか…

また、エリアによってはとにかく深海ごみが多く、ありとあらゆる種類の製品を目にしました。普段スーパーなどで目にする製品も深海に落ちていて、自分たちの生活と繋がっているんだなぁとショックでした。

参考:深海デブリデータベース

 

また、「生分解」の定義は「微生物によって、最終的に水とCO2になること」を指します。これを証明するのがこんなに難しいなんて…!

海にプラスチックを沈めてボロボロになることは、「生分解」したとは言わないんですね。ただ目に見えなくなるくらい「崩壊」しているだけかもしれません。

また、よく海水をくんできてラボ試験のみで「生分解」をはかる場合もありますが、結果が毎回ぶれたり実海洋試験の結果と整合性がとれなかったりすることもあると研究者から伺いました。

その為、私たちはラボ試験に加え、実海洋試験も行い、プラスチックの重量測定を行ったり、微生物の種類や遺伝子発現を調べたり、時にはSEM観察を行ったり…あれも…これも…

たまに「海で分解します!」という商品を見かけると、「本当に「分解」するんですか…?」と気になるようになりました。

 

また、例えこうやって先生方が真面目に海洋生分解性プラスチック製品を開発したとしても、値段が既存の製品より高いと買ってくれるのか?世の中に広まってくれるのか?ということも気になりました。

(実際プラスチックの展示会に行くと、海ごみのアップサイクル製品やリサイクルしやすい単一素材の製品などを作っても、高いと買ってくれないと嘆く企業さんを度々目にしました)

 

学生さんたちには「どうやったら海洋生分解性プラスチックを買ってもらえるか?」について考えてもらいましたが、

・パッケージで「環境にやさしい」ということをアピールする

・既存のプラスチックの生産を規制する

という意見が出ました。

 

海洋生分解性プラスチックの識別表示はすでに国内外にありますが、まだまだ世の中には知られてなさそうです…

参考:海洋生分解性プラ識別表示制度(JBPA)

 

プラスチックの生産規制については、まさに国際プラスチック条約締結に向けた政府間交渉委員会にて、議論が行われているところです

参考:環境省JPRSIセミナー資料

国内でも、バイオプラスチック導入ロードマップが策定されています。

 

皆さんは深海にごみがこんなに溜まっていること、ご存じでしたか?

また、海洋生分解性プラスチックを研究開発している人の存在や、製品の普及の課題についてもご存じでしたか?

 

もしご関心がありましたら、エピソード交じりでお話させていただきますので、ご連絡ください~

 

そして何より!

深海に沈んで回収不可能になる前に!ぜひ町や川で1個でもごみを拾ってみてください(^^)/