荒川クリーンエイドフォーラムでは集めたゴミのデータなどを分析して、社会に様々な発信を行っています。このような活動について、実際にメディアの方の感想やご意見を、東京新聞の土田さんにうかがいました。
まず土田さんの現在のお仕事をご紹介いただけますか?
今年9月から編集委員という立場で脱原発や震災復興の取材に関わっています。特に非営利セクターの発展や市民の政治社会参加などを取材のテーマにしています。
その狙いの中で荒川クリーンエイドのことも取り上げていただいたんですね。
荒川クリーンエイドの活動は重要だと思います。NPOの活動自体がゴミという社会問題に目を開かせる媒体になっているからです。NPOは市民と市民、市民と社会をつなぎ、コミュニケーションやネットワークを拡大する一種のメディアです。マスメディアもメディアですが、NPOもメディアです。
そういう意味では、マスメディアの側もちゃんとNPOに向き合って、その理念や活動内容をしっかり伝えることで、民主的な社会の発展に寄与しなければならないと思います。
記事を掲載していただいたポイントはなんですか?何に価値を持っていただけましたか?
新聞で取り上げるには、そこになにか「おやっ」と思わせるものが無ければいけない。5W1H以外にもう一つのW、Worth(価値)=ニュース価値が必要です。荒川クリーンエイドは20年間の活動の中で収集したゴミの種類をデータ化してきました。そこが素晴らしい。「ゴミに見る世相論」という新しい切り口でニュースになったわけです。
荒川クリーンエイドの情報発信は土田さんの目から見てどのように思われますか?
年間を通じての活動や報告書の発行などについてきちんと情報発信しており、テレビや新聞にも取り上げられていますね。情報発信を重視している成果だと思います。ただ、マスメディアの側がNPO活動をニュースとしてなかなか取り上げません。もっともっと情報発信するには、フェイスブックやツイッターなどSNSを活用するのも一つの方法でしょう。
また、マイボトルやリサイクルに関する市民運動を社会的に提案していくことも重要ではないでしょうか。業界団体や政府、行政に対してどんどん政策提言していく、そうすればマスメディアもニュースとして取り上げる機会が増えると思います。
情報発信していく意義は何だと思われますか?
NPOは社会的な使命を持って活動を続けている非営利団体です。荒川グリーンエイドには、ゴミの問題を通して地球環境の問題を考え社会を変革していくという大きな使命があります。社会的に意義のある活動ですから、情報発信しなければ社会変革のモチベーションにならないと思います。
当然、マスコミもNPOに対する理解を深め、NPO活動を促進するような情報発信を心がけるべきです。新しい市民社会の構築を念頭におき、NPOとの協働関係を築くなどNPO活動をサポートする時機に来ていると思います。
これからの情報発信はどのようにしていったらいいと思われますか?
2008年のリーマンショックや欧州経済危機を見ても分かるように、世界中が低成長、脱成長の時代に入っています。これからはそれに見合った生活実態に切り替えることが求められています。ゴミをポンポン捨てるような社会は持続可能ではありません。大幅な省エネ・リサイクル社会をめざすべきでしょう。それは脱原発にもつながります。
ドイツは2022年までの「脱原発」を可能にするエネルギー政策として再生可能エネルギーの拡大と大幅な省エネに国家を挙げて取り組んでいます。2011年には総発電量のうち再生可能エネルギー(20%)が石炭(19%)と原発(18%)を初めて超えましたが、電気代はそれほど上がってはいません。経済成長も維持しています。
スイスも2034年までの「脱原発」を掲げています。そのため年間1人当たりエネルギー消費「2000ワット社会」の実現をめざしています。2050年までに46%、2150年までに70%のエネルギー消費を減らすという壮大な計画です。
日本のメディアは低成長時代に備えたこうした重要な情報を伝えようとしません。省エネ・リサイクル社会の実現のため、日本のNPOは世界の情報にもっと敏感になり、マスコミに代わって自らが情報発信の主体であるという意識を持って活動してほしいものです。
最後にお聞きします。NPOに求める役割はなんでしょう?
今の日本は「主権在民」ではなく、「主権在『官』」だとよく言われます。国民の知らないところで法律が作られ、市民の意思に反した政策がドンドン決定していきます。民意が政治に反映されない社会です。でもあきらめるわけにはいきません。こうした民主主義の欠陥を補うには、市民が立ち上がり直接行動によって社会や政治を変えていく原動力になる必要があります。首相官邸前での集会とデモを呼び掛けたのもNPOです。新しい市民社会を構築するうえでNPOやNGOは非常に重要なファクターです。市民活動に参加している人たちは「社会変革」という意識と使命感を持って活動に当たってほしいと思います。
東京新聞 首都圏編集部 編集委員 土田 修 様