皆さんこんにちは
むーいまです。
荒川全然関係ないですが、生物多様性系の話題としての記事です。
■登場人物—–
むーいま
土木工学系でたぶん唯一アカウミガメをメインテーマに
博士論文を書いたが
何のお金にもなっていない
——プロフィール■
アカウミガメは頭がデカい
皆さんは当然、世界に7種ないし、8種のウミガメがいることをご存知かと思います。
世界の常識(?)ですよね
私が研究していたのはアカウミガメ(Caretta Caretta)です。
英名はLoggerhead sea turtleですが、
loggerheadは「馬鹿でかい頭、馬鹿頭」という意味です。
ひどくないですか!?
つまり、乃木坂46で言えばまなったん(秋元真夏)です。
アカウミガメは雑食性で歯ごたえのあるイカや貝類なども食べることから
あごが発達し、頭が大きくなりました。
ほとんどが頭蓋骨であり、脳みそはピンポン玉より小さいようです。
過酷なアカウミガメの産卵環境調査
当時、私は社会人博士課程の学生として、三井物産環境基金の支援を受け、調査をしていました。
5-8月はほぼ休みなしで約5年間、朝3時に起き、調査をし、7時には通勤する生活。
毎朝これ↓を探していました。
”タートルトラック”というウミガメが産卵のために上陸してきた跡です。
いわゆるフィールドサインで、ここから様々な情報を読み解きます。
また、は虫類は卵が経験した温度でふ化までの日数が変わったり、
性別が変化したりします
(温度依存性決定TSD:Temperature Sex Determination)
という特殊な性機構を備えています。
ちなみにオスとメスが分かれる温度は29度周辺にあり、
ふ卵期間の「性決定ステージ(温度感受期)」に経験した温度に左右されると
言われています。
アカウミガメの場合は29℃より温度が高いとメスになると言われています。
温度が高いとメスになる!?生存戦略の謎
様々な説がありますが、
生態系の”比較的”上位にいるウミガメは
<砂中温度が高い>
⇒エサとなる生物も豊富になると同時に、天敵(サメなど)も増える。
生存競争を勝ち抜くため、とにかく子を増やす必要がある。
メスを増やす方が生き残れる。
<砂中温度が低い>
⇒個体として強いオスを増やして、耐え忍ぶ。
<ミシシッピワニのTSD>
ミシシッピワニは性決定ステージにおいて30℃より温度が高いとオスになります。
これはミシシッピワニが生態系ピラミッドの頂点に立っていることから
メスが増えすぎると結果として、子孫が増えすぎ、エサがなくなるため、
逆転しているのではないでしょうか。
いずれにせよ面白いですよね^^
研究で調べていたこと
- ・離岸堤(潜堤)が上陸に及ぼす影響
- ・必要な砂浜幅(傾斜角などの影響)
- ・海浜植物との関係
- ・人の活動が産卵に及ぼす影響
- ・産卵巣の深さ
- ・砂の中の温度がふ化/脱出に及ぼす影響
↑これが産卵跡です。
産卵後に親ガメはどこに卵を産んだかをカモフラージュします。
産卵巣を探すには少しテクニックが必要です。
※調査には自治体からの許可を得る必要があります。
アカウミガメが産卵時に好む砂浜とは
この研究では以下の結論を得ました。
- ・離岸堤(潜堤)があるエリアは上陸を避ける傾向がある
- ・必要な砂浜幅は大潮満潮線から最短でも40m
- ・海浜植物が生育するほぼ境界面に産卵する
- ・夜間に砂浜に車両が進入してくるエリアは産卵を避ける
- ・産卵巣の深さ(中心)は42cm程度
- ・砂の中で32度以上の温度に長時間さらされると脱出率が下がる
私は、土木系学科を選んだ15才の頃から、土木工学と生物学の架け橋となれればと思って、
今の業界(職業)を選択した経緯があります。
19歳のころから環境保全活動に関わり始め20年。
結果として社会の複雑さを知るばかりの毎日です。
詳細は博士論文(要旨)/博士論文(本論)
が公開されていますので参照ください。
参考:県境を跨ぐアカウミガメ保全ガイドライン