皆さんこんにちは、いまむらさんです。
最近は「TNFD」や「ネイチャーポジティブ」という言葉を良く聞くようになりました。
私たち人類が持続可能な状態で地球で末永く存続できるよう、自然資本を損なわないようにしていこう、という考え方です。
いわゆるTCFDを補うもので、ESG投資の裏付けとして非財務情報開示メニューの1つです。
荒川清掃を継続している企業の皆さんは安心して下さい。ごみ拾いは生物多様性保全活動にもなるTNFDに資する活動です。
どう見せるかが大切です。
今回の案内人
いまむら – コードネーム【いまむらさん】
プロフィール
- 日本で今のところ唯一建設工学系で砂浜の自然環境をアカウミガメ目線で分析して博士号を持っている。が、生活の役にはたたない。
- それっぽいお仕事
- 環境省ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン検討委員
- 立教大学サービスラーニングセンター兼任講師
- (認定NPO)日本NPOセンター評議委員
- 上場企業を中心に年間50社程度の企業さんに向けて環境講話をしている
今回の案内人
あかぎ – コードネーム【クジラくん】
プロフィール
- 東京海洋大学出身。荒クリFに就職したが早く海獣と触れ合える仕事に転職したい。誰か紹介して下さい。
- 最近の悩み
歯のインプラント治療で大きな出費が発生した - 良かったこと
夜の歯磨きをサボらなくなった
TNFDって何?
TNFDは「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」の頭文字から成る言葉です。
日本語では自然関連財務情報開示タスクフォースと訳されています。本タスクフォースでは、企業・団体が自身の経済活動による自然環境や生物多様性への影響を評価し、情報開示する枠組みの構築を目指しています。
国連環境計画(UNEP)やNGOによって始まりました。
企業がTNFDに取り組むメリットとは?
TNFDに取り組むことによって、自然環境に配慮した事業活動を行なっているというポジティブな社会的評価を受けられます。
さらに近年では、会社の財務状況に加えて自然環境や社会環境に配慮した活動がおこなわれているかが重視されてきており、投資家も積極的な投資をおこなっています。
ESG投資とは?
ESG投資
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)における課題の解決に資する投資です。
環境や社会に配慮して事業をおこない、さらに、適切なガバナンス(企業統治)がなされている会社に投資しようというものです。
〇環境(Environment):気候変動、水資源、生物多様性など
〇社会(Social):ダイバーシティ、働き方の改善、サプライチェーンなど
〇ガバナンス(Governance):不正防止、法令遵守、透明性の高い経営、取締役会の構成、少数株主保護など
これは、環境問題、労働問題、人権問題、ガバナンス上の問題など、社会が抱えている課題をクリアしていく企業こそがサステナビリティ(持続可能性)があり、中長期的に成長していく企業だという考え方にもとづいています。
したがって、こういった企業に中長期的に投資することでリターンを期待できると考えられます。
ごみ拾いとTNFD
ごみ拾いの効果「生物の生育生息場の保全、再生」
自然界に出てしまった人工系ごみは野生動植物に対して悪影響を与えることがあります。絡まったり、誤飲誤食されたりすることがあります。
また、人工系ごみに含まれる添加剤や生物濃縮による影響も考えられます。ただし濃度にも因りますので過剰な反応は避けなければなりません。
ごみ拾いの効果「水質の改善」
地球上の全ての生命に不可欠な水。自然界に出た人工系ごみを放置し続けるとマイクロ化、ナノ化し、水質に影響を及ぼします。
ごみ拾いによって、水質が維持、改善され、生態系が健全な状態に保たれます。
ごみ拾いの効果「景観改善」
景観は大切です。割れ窓理論ということを聞いたこともあると思いますが、きれいに保たれた環境はその状態が維持されるポジティブな力が働きます。
ネイチャーポジティブとは?
企業・経済活動によって生じる自然環境負荷を抑制し、「生物多様性を含めた自然資本を回復させる」ことを目指す概念のこと。
企業経営において重要性を増しています。
以下に示す10の原則があります。和訳部分は意訳を含んでいます。
- Nature as a whole 自然はみなつながっている。広く考えること。
- Avoid and mitigate 最初に回避、最後の手段としての代償
- Holistic and actions 総合的な視点を鑑みた行動
- Aligned with global goals 世界の目標と整合させる
- Mainstreaming 主流化 上意下達
- Collaborative SDGsのパートナーシップ同様協力すること
- Adaptive モニタリングしながらダメそうなら改善する等順応的管理をすること
- Transparent 透明性と簡潔性
- Just 公正
- Mesurable 測定可能性。数値化と見える化
30by30? 自然共生サイト? OECM?
30by30(サーティ・バイ・サーティ)
2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標です。
30by30の達成を目指すため国立公園等の拡充のみならず、里地里山や企業林や社寺林などのように地域、企業、団体によって生物多様性の保全が図られている土地をOECMとして国際データベースに登録し、その保全を促進していきます。
自然共生サイト
「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のことです。
認定区域は、保護地域との重複を除き、OECMとして国際データベースに登録されます。
OECM(Other Effective Area-based Conservation Measures)
保護地域以外の生物多様性保全に貢献している場所を指します(例 里地里山、企業の水源の森)。
非財務情報を開示するリスク
非財務情報の開示を規制対応でなく、企業価値向上の機会と捉えることが良い一方、
開示内容(質、見せ方etc…)が伴わないと投資家やNGO等からの批判(訴訟)につながる場合もありえます。
企業活動にはトレードオフになる部分があり、都合の良い情報だけを開示する訳にはいかないでしょう。
開示するリスクの内容やその見せ方にも神経をとがらせる必要があります。
ポジティブ、ネガティブの内容に限らず開示の際は、法務部局や経営層との入念な下準備と確認が必要となります。
企業価値の向上につながるような高い目標を設定し、その到達に向けて一気に舵を切る、
実現可能性が高く、身の丈にあった目標設定にする、
企業の特性に応じた手法があると考えられます。
順応的管理(アダプティブマネジメント)の視点から、ストーリーと根拠を意識しながら、その過程自体も定期的に開示し、
着実に進めことで信頼性が高まり、リスク低減につながると考えられます。
整理すると以下になります。
1.精査された情報を開示すること
2.ストーリー、根拠、過程を重視する
3.多様な視点からリスクマネジメントをする
まとめ
- ごみ拾い活動はTNFDと密接につながっている。
- 荒川河口干潟には絶滅危惧種トビハゼを含む多種多様な生物が生育/生息していて、干潟の人工系ごみの除去で生物多様性が保全される。
- ごみを拾った事実だけでなく、人工系ごみを除去したことで保全された面積やどれくらいの量を回収したかによって結果としてマイクロプラ化を抑制したなどの分析をすると良い。
- 社内浸透にはシンプルな活動から始めたほうが良いこともある。
- ごみ拾いだけでなく、外来植物の除去活動なども組み合わせることができる。
- 開示にもリスクがあることを認識し、質の確保にも努める。
本稿はR6荒川下流管内水辺等管理支援補助業務、R5環境省令和の里海づくりモデル事業、Bloomberg L.P.と協働するWetland Projectの一環で構成/執筆しました。
参考
荒川河口干潟の生物多様性(協働:(株)JUNESEP)
ナレーション:今村レオ(?)